移住者インタビュー

岡山市北区
30代
Iターン
自営業
家族移住
出身地:
東京都
取材時住所:
岡山市北区
移住年:
2012年
年齢:
39歳
家族構成:
妻、娘、息子
職業:
農業
東京を離れて 福島県で農業を開始
東日本大震災を機に 群馬県に移住
新しい土地での農業 開始に向け情報収集
住まい探し
岡山市へ

自然の中で「生きる」ことの大切さを実感する毎日です。

岡山市への移住を決められたきっかけは?
26歳まで東京で暮らしていたのですが、国際協力のNGOにボランティアで参加したことをきっかけに、日本で農業に取り組んでみたいと思いました。タイの農村などでNGO活動を行っていたのですが、「まずは自分自身の足元の生活を見直してみるのも大事なのではないか」というアドバイスをもらい、感銘を受けたのです。帰国後は福島県で1年間の農業研修を受けて、修了後もそのまま福島で養鶏や野菜づくりなどを行っていました。しかし、2011年3月に東日本大震災が発生し、2ヶ月後の5月に一家で群馬県に移住。群馬では農業を休業していたのですが、農業を営むなら西日本でなるべく既存の原発から遠い場所が良いと思ったこと、また、二人目の子どもが生まれたばかりでしたので、子育てをしていくのに安全な場所が良いと思ったことなどから、岡山市への移住を決めました。岡山は農業が盛んな土地というイメージがあり、また福島時代の知り合いがすでに住んでいたということも、決め手の一つになりました。
移住するまでの流れを教えてください。
まずはインターネットを通じて情報を収集しました。住まいについては空き家情報バンクなどにもあたってみたのですが、なかなか条件に合う物件を見つけることができませんでした。そんなときに、福島の農業研修時代のOGでもある大塚愛さん(移住者支援団体「子ども未来・愛ネットワーク」代表)から、今の住まいの大家さんを紹介していただきました。実際に物件の下見に来たときに「この場所ならやっていける」と感じて、岡山市へ移り住んだのが2012年3月のことです。
現在の生活について教えてください。
私が農家として農作物を育て、妻は週4日パートで働いています。朝起きて子どもを小学校や保育園に送ってから、田んぼや畑で農作業をします。お昼には一度家に戻って食事をして、午後からはまた畑仕事。学校や保育園が終わる頃に子どもを迎えに行き、夕方6時頃には家族みんなで食卓を囲んでいます。そして、夜の9時には眠りにつく。そんなありふれた毎日を大切に思っています。

現在は2反の田んぼでのお米づくりと、4反の畑で野菜を育てています。育てている野菜はだいたい30種類から、多いときでは50種類ほど。ひとつの畑で同じ作物をたくさん作るのではなく、少量多品種生産というスタイルでやっています。様々な野菜や雑草が共存する中で、バランスをとりながら、土地が豊かになっていくという状態をイメージしています。収穫した農作物は、セット野菜などの形で知人に販売をしています。
移住してみて苦労したこと、事前に調べておけばよかったことは?
移住にかかる引越しの費用など物理的な面での苦労もありましたが、気持ちの面での整理が一番難しかったと思います。移住のきっかけが震災だったので「なぜこれまでの生活から切り離されなければならないのか」という思いがありましたし、今もその気持ちを完全には消化できていない部分もあります。ただ、こうして生きていて豊かな自然環境が身近にあれば、持ち物はゼロであっても、そこにこれからいろいろなものを積み上げていけるのだと、そうしたスタートラインに立てたことがとても嬉しかったです。

また、事前に農地のことまで考えられなかったので、実際に農業ができるようになるのかとても不安でした。しかし、小さな縁が繋がって最初の農地をお借りすることができ、その後この地で生活しながら農作業を続けることで、今ある農地をお借りできることにもなりました。
移住後に感じた岡山の魅力とは?
「住めば都」とはいいますが、家族で暮らしている自分の家や近所の里山は本当に気に入っています。子どもの学校や普段の買い物など、日々の暮らしに不便さを感じることはありません。もともと街中での遊びや観光に対する興味が薄いのですが、最近は岡山市での暮らしにも慣れてきて少しずつ外に目を向ける余裕も出てきたので、家族で近隣の温泉に出かけるなど、これからもっと岡山での暮らしを満喫したいと思っています。
移住を検討されている方へのメッセージ・アドバイス
特に震災を経験した移住者の方に当てはまることかもしれませんが、新しい土地に移住してきたばかりのときは、どうしても気持ちがほぐれずに、かたくなな思いにとらわれてしまうこともあるのではないかと思います。まさに私自身がそうでした。最近は岡山で新しい友人もでき、人それぞれ異なる価値観を持ち、これまでの人生で背負ってきたものも違うということを、改めて感じるようになりました。新しい土地で自分のことを理解してもらうのは大変なことですが、私自身の方も相手のことをよく解っていませんでした。相手のことを理解しようという姿勢が、新しい土地での人間関係の始まりです。今は私も、やっと人と人との関係づくりのスタートラインに立てたのだと思っています。
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